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吉野と歌人・西行 吉野の桜/奥千本・西行庵/吉野と歌人・西行/きさらぎの望月のころ/西行物語絵

●吉野の桜
今年は殊の外、桜が美しかったように思う。
奈良県・吉野山は日本屈指の桜の名所として知られる。
先日、吉野の奥千本に行く機会に恵まれた。
日本古来のシロヤマザクラを中心に約200種、約三万本と言う世界に類を見ない規模の桜が咲き誇り、その光景は「千本桜」「一目千本」等と形容されてきた。
下千本(しもせんぼん)、中千本(なかせんぼん)、上千本(かみせんぼん)、奥千本(おくせんぼん)と呼ばれており、4月初旬から末にかけて、下→中→上→奥千本と、山下から山上へ順に開花してゆくため、長く見頃が楽しめる。
儚げで可憐な山桜が尾根から尾根へ、谷から谷へと山全体を埋め尽くしているのはまさに絶景。
ソメイヨシノとはまた違う山桜の赤みを帯びた葉や、木々の新緑と重なり合った色彩は、みとれて言葉にならないほどだ。

 

●奥千本・西行庵
私は、十数年前にはじめて吉野の花見をし、あまりの見事さに何年か続けて訪ねた。
山里から山頂まで咲く時期が違うので、何回かに分けないとみて廻れないのである。
奥千本のかなりの急斜面の谷あいを登っていくと鬱蒼とした木々の中に、山桜に囲まれた小さな平地があらわれ、西行が結んだという三畳ほどの小さな庵が佇んでいた。(正確には復元だが。)
粗末ともいえる庵にハラハラと花弁が舞い散り、幻想的で幽玄な趣がとても強く印象に残った。
今年は、もう一度観てみたい、友にも観てもらいたいと、遅い開花にあわせ久しぶりに出掛けたのである。
奥千本には前回とは反対の方向から入り、まず金峯神社にお参りし、いざ。
日ごろの運動不足が露呈するような急な山道を上りきり、急斜面をつたうような細い道をまるで修験道のようと言いながら降りていくと、見覚えのある小さな平地にたつ西行庵にたどり着いた。
明るい!なんと西行庵の谷向の山の木々が伐採されて丸坊主になっており、燦々と陽が注いでいるのだ。
うーん。私の奥千本は幻となってしまった、、、
しかし、山桜は美しく、景色も遠くの尾根まで見渡せ素晴らしいものだった。
伐採された山には桜が1000本植えられたようなので、あと数十年すれば新たな景色をみせてくれるのだろう。

 

●歌人・西行
西行は、平安末期、鎌倉時代の幕開けという激動の時代に生きた歌人である。
関東の武将・藤原秀郷の子孫として生まれ、俗名・佐藤義清。西行は西方浄土に因む法号である。
代々衛府に仕えた家柄であり、鳥羽上皇の親衛隊である北面の武士として仕えていた。
北面の武士は鳥羽院の御所の北面を警護する役職だが、武勇はもちろんのこと、学芸に優れ、眉目秀麗であることがなによりも条件とされた。
平清盛も北面の武士で同僚だった。 
ちなみに、NHK放映中の大河ドラマにでてきた奥州の藤原秀衡と親類で、源頼朝にも会っているという。
ところが、官位も妻子も捨てて、23歳の年に突然出家する。
理由は、親友の不意の死に無常を悟ったとか、皇位をめぐる政争への失望感、鳥羽天皇の中宮・待賢門院との失恋が動機ではと種々の説があるが、明らかにされていない。
遁世して都の郊外に庵を結んだ後に向かったのが、吉野である。
吉野山は、奈良時代に役行者が開山した山岳信仰の霊場である。
役行者が蔵王権現の姿を桜の樹で彫り本尊としたので、桜は「ご神木」として崇拝され、手厚く保護されてきた。

●きさらぎの望月のころ
吉野は桜の歌枕、そして桜といえば西行といわれるほど吉野の桜を愛しんだ。
吉野の桜を詠んだ歌は60首余もある。
歌集に目を通すと、次から次へと思うがまま、思いがあふれるままに詠んでいる感じがする。技巧を凝らすというのではない。
隠遁生活、世捨て人ときくと、謎めいた厳しい難しい人なのかなと思っていたが、思いのほか親しみやすいのである。

  

西行といえば、私が一番に思い浮かぶ和歌は、
「願はくは 花の下にて 春死なむ そのきさらぎの 望月のころ」である。
願える事なら、満開の桜の下で春に逝きたいものだなあ。2月15日頃に。
「如月の望月」というのは、お釈迦様の命日2月15日のこと。
今でいうならば3月中旬以降の満月の日にあたり、ちょうど桜が花盛りを迎える時期となる。
晩年西行は、河内の弘川寺に草庵を結び、まもなく病を得た。
西方浄土へ旅立ったのは、建久元年(1190) 願いのとおり2月16日、七十三歳だった。

 

●西行物語絵
諸国を行脚しながら仏道と和歌の道に残る半生を費やした西行の人生が人々の篤い敬慕を受けてか、鎌倉時代には既に、彼の行状を描いた絵巻制作が行なわれていたことが知られる。
『西行物語』および『西行物語』を絵画化した「西行物語絵」は、写本、絵巻、版本などの形で伝わっている。

 

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