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モネと睡蓮/クロード・モネ/松方コレクション/日傘をさす女/ラ・ジャポネーズ

●松方コレクションの新発見

2016年9月、フランスのパリ・ルーブル美術館の館内でクロード・モネの絵画「睡蓮」が見つかった。作品名は「睡蓮-柳の反映」というタイトルの作品だという。美術館側で詳細に調べていくと、本作は松方コレクションの一つだと判明した。ただし、環境の悪い場所で約60年にわたり保管のされた結果、作品の損傷部分が大きく、画面のほぼ上半分は欠損しているものとなっていた。先のブログで紹介したように、松方幸次郎の死後、そして第二次世界大戦終了後にフランスに残された松方コレクションは一部がフランス政府に接収され、残りが日本へと送られていた。2016年に発見された作品は接収作品のリストにはないため、遺族の松方家へと返却されることとなった。松方家はこの作品を国立西洋美術館に寄贈し、可能な限りの修復を経て、2019年にこれを公開している。

●モネと睡蓮

モネは1840年にフランスで生まれた。フランスのサロンや印象派展などで多くの作品を発表していたが、絵の買い手がつかない時期もあったという。モネの作品として、一部を除けば風景画が多い。その中で、我々がモネの作品としてイメージするのは「睡蓮」であろう。

「睡蓮」はさまざまな構図の連作であり、1895年から1926年までのべ250作品が製作されている。日本国内でも国立西洋美術館や群馬県立美術館など10館以上が作品を所蔵している。したがって、日本人にもなじみの深いモネの作品はやはり「睡蓮」である。

製作のきっかけは、自宅の土地にセーヌ川の水を引水して池を作り、「水の庭」と呼ばれる庭園を造ったことによる。この池には中央部が膨らんだアーチ型の日本で見られる太鼓橋が掛けられた。そして、その池にはフランス産のほか、輸入した南米、エジプトの睡蓮が植えられたようである。

またモネは「大装飾画」という長辺2m近い巨大な壁画サイズで描いた「睡蓮」の作品をいくつも制作している。一つの部屋全体を「睡蓮」の絵で埋め尽くそうという計画であった。フランス政府への寄贈を提案したが納める建物はモネの生存中に完成することはなかった。これら装飾画のためにモネが描いた作品のうち2点はモネから直接、松方が購入し、彼のコレクションとして収まった。そして、松方の死後、第二次世界大戦終戦後に一点が日本の国立西洋美術館に収蔵され、冒頭で紹介した2016年にルーブル美術館で発見された作品がもう一点である。

●睡蓮に込めたモネの想い

では、モネはなぜ「睡蓮」を描き続けたのであろう。その理由を紐解くには、数点のモネ作品を考察しなければならない。

「ラ・ジャポネーズ」というモネの作品がある。19世紀末、フランスで流行したジャポニズムという日本ブームの中で描かれた一枚である。扇子を右手に持ち、衣装は和服の打掛を着ている。左右対称であるが、広重の浮世絵「見返り美人」の影響があるようにも思われる。描かれた女性はモネ夫人のカミーユであるという。

モネ夫人のカミーユを描いた作品がほかにもある。「散歩 日傘をさす女」という1875年、モネ46歳の時の作品である。しかし、1879年にカミーユは亡くなった。実はこの作品とほぼ同じモチーフで日傘を持つ女性を描いた作品が二点ある。1886年に描いたとされるこの二点についてのモデルはモネの後妻・アリスの三女・シュザンヌであるとされている。ただ、1886年の日傘をさす女では顔の表情がぼんやりとしか描かれていない。これは亡くなったカミーユへの想いから最初の一枚のように顔の表情は描けなかったのであると推察されている。

さて、そして「睡蓮」の絵である。日本では寺院の池で睡蓮、蓮の花を見かけることが多い。仏教思想に伝わるように極楽浄土に蓮の花が咲いていることを模しているのである。19世にヨーロッパでブームとなったジャポニズムであるが、モネは日本・東洋に対する関心から睡蓮と仏教思想の関係を知っていたのではないかと思われる。だとすると、「睡蓮」の連作は亡き妻・カミーユへの鎮魂のために描いたのではないか、と考える美術史家は多い。

 

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