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日米で咲き誇るカキツバタ・燕子花と光琳/尾形光琳・国宝燕子花図屏風・根津美術館・八橋図屏風・メトロポリタン美術館

●春開く屏風
今の季節、年に一度出会える絵画がある。東京・青山にある根津美術館が所蔵する国宝・燕子花図屏風である。元々は京都・西本願寺の所蔵だったというこの屏風は、鉄道王とも呼ばれ、東武鉄道や南海電鉄の事業に携わった実業家であり茶人としても知られる根津嘉一郎が大正3年に購入している。以降、根津の開いた茶会では、好んでこの屏風を招待客に披露したという。国宝の指定は昭和26年、根津の死後で、11年を過ぎていた。
この作品は六曲一双、金地の上に描かれた燕子花の群生である。作者は尾形光琳。絵師として、もしくは尾形乾山との合作である陶器の絵付けとしても知られている。
風薫る五月、この図屏風を訪ねる愛好家も多い。この作品の魅力とは何だろうか。

●光琳のチャレンジ
尾形光琳は呉服商の家に生まれている。結果的には、裕福な商家を破綻させた放蕩息子ではあったが、描く作品には家の商品として見ていた着物の図案が生かされている。
着物の模様として大事なものは図案であり、その型紙である。光悦はその型紙を技法として、本作に取り入れている。本作をよくみろと、同じ形状の花弁と葉を持つカキツバタが描かれているという。つまり、六曲一双の中にリズミカルな花束が散りばめられている。
構図を見ると、左面には花束を左下から、右上に、一方右面には右下から左中央へと描き、奥行を見せる遠近法が用いられているようだ。
画材として、1000枚を越える金箔を全面に用い、絵具は300年を過ぎた今でも鮮やかな色を見せる良質な岩絵の具を使用している。自作の中でも、費用を掛けて製作し、満を持した作品であったものと思われる。

●もう一つの図屏風
アメリカ・ニューヨークにあるセントラルパークの片隅にメトロポリタン美術館がある。設立150年を越える歴史ある博物館である。ここに、光琳作の燕子花図屏風の兄弟作ともいえる八橋図屏風がある。日本美術の保護・流出阻止が十分機能していない頃、国内の美術商を通じて、同美術館が購入し、収蔵したものである。こちらの屏風は前掲と同じで、六曲一双の屏風であるが、名称の通り、燕子花とともに八橋が描かれている。左面の中央下側から、右面の中央上まで八橋が描かれている。これにより遠近感は増して、広がりを感じやすい。
燕子花図屏風が先に製作されているようであるが、この八橋図は以降にさまざまな図案として描かれる八橋図のスタンダードとして認知されるようになった。この図案を元に、茶道具や染織などの工芸品に多数取り入れられて現在までその作風は生きている。また、両屏風とももともとは日本にあったものであるから、大正4年には同時に展示されたことがあったようだ。(その後、平成24年には根津美術館において両屏風が出品される展示会が開催されたことがある)

●燕子花の意味するもの
光琳がこの図案を描いたもとになったものは平安時代の文学・伊勢物語といわれている。恐らく、「昔男ありけり・・・」という書き出しを古文の授業で学んだ方は多いと思う。歌人・在原業平をモデルとしているとされている文学である。その一部の章に、京都から下ってきて現在の愛知県知立市八橋についたときに、主人公が同行者から川辺に咲いている「かきつばた」を頭の文字にして、和歌を詠むように言われたという。主人公は「唐衣きつつ馴れにしつましあればはるばる来ぬる旅をしぞ思う」と詠んだという。この章の風景が燕子花図屏風であり、八橋図屏風であるという。
この八橋はなぜ「く」の字型に屈曲しているのであろうか。知立市八橋の土地に伝わる伝承によると、ある時、子供を連れて川を渡ろうとした女性が、川に子供が飲み込まれて見失ってしまったという。この女性が後に尼僧となり、安全に川を渡れるように橋を掛けようとした。しかし、この川は幾筋もの流れに分かれているため、一本の橋を掛けることができず、複数の端で繋ぎ合わせた八橋の形になったという。しかし、後世ではこの八橋や川の姿は消え失せてしまい、屏風にあるような風情は感じられなくなってしまったようである。
さて、余談であるが、燕子花と非常に似ている花として、菖蒲(あやめ)がある。また、花菖蒲(はなしょうぶ)と呼ばれるものがある。これらの違いはなんであろう。花菖蒲は菖蒲を観賞用に改良した花だそうである。菖蒲の生育する場所は乾燥した土壌であるようだ。一方、燕子花は水中から葉や茎を出す水生植物とのことだ。花菖蒲は半湿地が生育地として使用されている。東京・葛飾に堀切菖蒲園という名所がある。安藤広重の浮世絵にも登場する江戸時代から続く景勝地である。以前、編集子も出かけて行ったことがあるが、確かに土壌は湿地であったので、ここに植えられていた花は花菖蒲ということになる。

  

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