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掛け軸の主な種類とは?よくある形式やおさえておきたい基礎知識


かつての日本家屋には床の間がありました。もともとは身分の高い人が座る目的で、畳の間から一段高い席を作ったことが起源です。この床の間は、その後、室内の装飾スペースとなり、そのスペースを利用した室内装飾品の代表が掛け軸/掛軸でした。現在、和室の減少によりこの床の間が少なくなり、多くの日本家屋では掛け軸を活用する場所がなくなってきましたが、美術品の装丁様式として今もなお用いられています。今回は、掛け軸についての基礎知識をご案内します。

 

「掛け軸」に関する基礎知識
  
床の間のあるお宅では、その壁面に掛け軸が下げられていたことがあると思います。その掛け軸とは、とのようなものでしょうか。
掛け軸は、絵画や書道などの美術作品を装飾や展示のために垂れ下げて飾るためのものであり、収納された状態が一本の軸状のものを指します。一般的に、絹や紙に絵画や書の文字が描かれ、その上端には木製の細い棒と、下部には巻きつけるための円柱の軸が取り付けられているものです。
まず、はじめに、日本における掛け軸の歴史と現在までどのような用途で使われてきたかについて、ご紹介します。

  
●掛け軸の歴史
掛け軸の起源は、仏教の影響を受けたと考えられています。6世紀頃、中国から伝わった仏教美術において、絹や紙に仏教の絵画や文字が描かれ、これがのちに掛け軸として日本にも伝わりました。したがって、掛け軸はもともと礼拝の対象でした。
その後、平安時代には貴族や公家たちが掛け軸を愛好し、風流な文化が栄えました。この時期、掛け軸は日本の伝統的な美術品としての地位を確立しました。
さらに室町時代になると、茶道が興り、茶室においても掛け軸が重要な要素となりました。茶道では、掛け軸が茶会の雰囲気を演出するために使われ、茶人たちによって芸術的な価値が重んじられました。中国の明朝時代の絵画や書も多数渡来しています。
江戸時代になると、一般庶民の間にも掛け軸が広まりました。商人や町人たちも、普段から自分の家に掛け軸を飾り、日常生活に取り入れました。この時期には、俳諧や浮世絵といった新しい芸術の形式も登場し、これらが掛け軸にも影響を与えました。
このように、時代の経過とともに掛け軸をかける目的や種類が多様化しました。
また、床の間があるお宅では、来客に応じて掛け軸を取り替えるなど、もてなしの意味を込めて掛けられるようになりました。

●掛け軸の用途
現代において掛け軸は主に「床かけ用」と「仏壇用」の2つの用途があります。
床かけ用は部屋を彩る装飾品として親しまれているものです。季節の花や鳥、景色、お祝いの日に飾る寿ぎの掛軸などがあり、特に、江戸時代以降に日本画家の活躍によって、美術的価値のある掛軸が多数生まれました。
一方、仏具用の掛け軸は仏壇にかける用途で使われるものです。仏壇内部に仏像に代わって掛けられたり、仏壇外側に小さなスタンドを使用して掛けられたりするもので、サイズは小さいものとなります。また、仏間に床の間があれば、大きい仏画などを掛けたりすることがあります。
神道を信仰されているご家庭では、床の間に神様のお姿やお名前が書かれた掛軸を掛けられているお宅もあります。
なお、掛け軸は適宜掛けかえますので、安全に取り外しができるように矢筈という道具をお持ちになることが勧められます。

 

掛け軸の主な種類
 
次に掛け軸の種類について、ご紹介します。大きくはお宅の宗教に関わるものと、室内装飾用のものに分けられます。後者は、季節や祭事などに合わせて、掛け替えられることが多い掛け軸となり、様々な図柄があります。
なお、茶道を学ばれている方はおわかりでしょうが、「茶掛け/茶掛」と呼ばれるお茶室やお茶会で掛ける目的の掛け軸も茶道具の一部として流通しています。

 
1.宗教に関わるもの
●仏画の掛け軸
仏画の掛け軸は仏様を祀るために用いられるものです。また、弔事やお彼岸、お盆などの仏事で先祖を供養するときに、出して飾ることが多くあります。
仏画ではありませんが、お遍路で知られている四国八十八ヶ所のような霊場で、紙本や絹本に御朱印を頂いて、掛け軸に仕立てる方もいらっしゃいます。
また、先にご紹介したように、神道に関わる掛け軸があります。

2.室内装飾用のもの
●季節の掛け軸
日本の四季に合わせ床の間に季節の絵柄の掛け軸を飾るために用いられています。
たとえば、春には桜、夏には清流、秋には紅葉、冬は水仙などの画題の掛け軸を飾ります。季節感や四季折々を味わい楽しむお宅もあるのではないでしょうか。
特に、実際の季節より少し前からかけ始めるのが粋とされ、季節が変わる前に、次の季節のものへ変えていきます。
ただし、「四季花」という図柄は、花の王様といわれる牡丹を中心に春夏秋冬の代表的な花を一堂に描いた作品で、季節を問わず使用できるものです。

●縁起物の掛け軸
福や運気を呼び込み、邪気をはらうという目的で一年中、掛けられている掛け軸があります。松竹梅、七福神や鶴、虎、龍などの図柄が縁起物・魔除けとして用いられています。
仏画に近いのですが、不動明王や観音様などの掛け軸を掛けることがあります。

●彩色山水の掛け軸
色を使って描かれ山と川や海を描いたものが彩色山水と呼ばれています。 墨色の濃淡だけで描く単色山水画より、より現実の風景を感じられる作品で、色があるかないかというだけで絵の雰囲気は大きく異なります。桜や雪景色など、風景に季節を感じるものは、季節に合わせて用いられます。
中国由来の文人画、日本の南画といわれるジャンルの作品に多く描かれました。
また単色の山水画、特に水墨画と呼ばれる作品は明治以前の山水画に多くあります。古くは室町時代の雪舟、鎌倉時代から室町時代に日本にもたらされた中国の牧谿などの作品は、特に古美術としての価値が高い山水画となります。

●書の掛け軸
人への教えを説く「禅語」や教訓などの言葉をしたためた書の掛け軸があります。前者は禅宗に関連して茶道の茶会、茶室に掛けられることが多くある掛け軸です。したがって、作者は禅僧または茶人による書となります。後者は、明治期以降の政治家や学者、偉人、芸術家などの作品が多く残されています。
もちろん、古い書家による作品や、現代の書道家による芸術としての書道作品の掛け軸もあります。

●寿ぎの掛軸
結婚や記念日、祝い事などハレの日で使う掛軸があります。
結納式では「高砂」という、夫婦の翁を描いた作品が一般的に用いられています。

●節句の掛け軸
ひな祭りには「女雛男雛の図」、端午の節句には「鯉の滝登りの図」「鍾馗様」などの掛け軸が用いられていました。

その他、日本画全般がかつては掛け軸として表装されていましたので、日本画家のとして歴史を題材としたものや花鳥画、人物画、静物画、動物画、風景画などさまざまな作品を目にすることができます。さらに、俳句や和歌を書いた短冊や色紙の掛け軸があります。また、「絵」と「書」をミックスした画賛と呼ばれる作品の掛け軸もあります。

  

よく使われている掛け軸の形式の種類
 
掛軸には、仕様に応じたさまざまな形(形式)があります。紙や絹に書かれた作品を掛け軸に仕立てることを表装といいます。
日本では、主に大和表装め大和仕立てと呼ばれる計8様式の仕立て方が行われています。ただし、中国から伝わったままの形を伝えている文人仕立という方法もあります。
また、掛け軸にはそれぞれパーツの名称があります。ここでは詳しく説明はしませんが、例として以下のような名称が使用されています。
裂地(掛け軸用いられる布地)、風帯(上部の軸より下がる布地)、軸棒(巻きつけられる棒)、軸先(軸棒の両端に取り付けられるパーツ)、巻緒(収納するときに巻いて縛る紐)、風鎮(軸先に下げて姿勢を安定させる錘)など。

  

●大和表装
一般的な掛け軸の形式として、日本で行われている様式として、「真」「行」「草」に対応した3タイプで、8種類にさらに分けられるています。そのため「真の真」「真の行」などと、表装の様式が呼ばれます。「真」「行」「草」は格式の高さを表しており、格式の高さは【真>行>草】となります。また掛け軸に使うパーツが形式ごとに異なってきます。

A.真/裱褙(ひょうほえ)、
主に仏教に関する礼拝用の書画の表装に用いられる形式。希少な作品を表装する際に用いられる。
(1)真の真/一文字、中廻し、外廻しが本紙の周囲を囲む。
(2)真の行/一文字が本紙の上下にあり、中廻しと総縁が周囲を囲む。
(3)真の草/一文字がなく、中廻しと総縁が周囲を囲む。
B.行/ 幢褙(どうほえ)
近年の中国の書画、禅僧の墨蹟や歌切など、現在の書画に広く用いられており、本表装とも呼ばれる。外廻しがなく「天」と「地」という部分が本紙につながる。
(4)行の真/一文字、中廻しが本紙の周囲を囲む。天地は中廻しの上下に付く。
(5)行の行/本紙の上下に一文字が付く。中廻しは周囲を囲み、その上下に天地が付く。「大和表具」の代表的な形式で、三段表装、本表装と呼ばれる。
(6)行の草/(5)の一文字がない形式で、天地と中廻しに分かれる。二段表装とも呼ばれる。
C.草/輪褙(りんほえ)
茶掛に用いられ、禅僧や茶人によって書かれた書画に多く用いられる表装。B行表装より柱(本紙の左右)が狭い。
(7)草の行/一文字が本紙の上下に付き、中廻しは周囲を囲む。柱は細い。中廻しの上下に天地が付く。
(8)草の草/(7)から一文字を除いた形式。

●文人表装
中国王朝時代に流行した表装形式です。大和表装で用いられる、中廻しと外廻しという布地の区別がありません。つまり、左右、上下まで作品の周りを一種類の裂地で本紙の周囲を囲んだ簡素な形式です。また大和表具には風帯がつきますが、文人表具には概ね風帯がついていません。漢詩や文人画など、書と絵の両方に用いられる表装です。

  

お手元に気になる掛け軸はありませんか? 掛け軸の用途と種類を把握して、ご使用にならなければこたろうへ!

  
以上で掛け軸の種類について説明させていただきました。
もし、お手元に掛け軸がありましたら、その用途を考え、現時点での生活に必要ないものであれば、ご処分を検討することも必要です。というのは、掛け軸はそのまましまっておくと、かえって傷むことがあり、時々は掛けて広げてあげることが大切です。こうした保管がご面倒であれば、ぜひ骨董買取こたろうへお譲りください。

 

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