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古伊万里に魅せられて・赤木清士コレクション 御嶽海と雷電/兵庫県立陶芸美術館/ 意匠の面白さと技術革新/収集の楽しさ

●大関・御嶽海と雷電
初場所で御嶽海が優勝、大関昇進をはたし、新春に明るいおめでたいニュース。
信州出身の大関は「雷電」以来、約200年ぶりの快挙、とも話題となりました。
雷電は江戸時代の名力士で6尺5寸、45貫(197cm、169kg)あったといい、驚きです。
山陰地方・松江藩の殿様で茶人としても高名な松平治郷(不昧公)は、雷電が力と技と学徳の傑出していることを見てとり天明八年(1788)松江藩に召し抱えています。
八石に三人扶持を与えられ、お抱え力士として活躍したのです。
江戸時代も相撲は盛ん。さしずめ、庶民のヒーローだったのでしょう。
このニュースで以前、江戸期の力士文様の皿をみたことを思い出しました。   伊万里焼、江戸後期です。今ならキャラクターグッズ?
面白いなぁと印象に残ったのです。

●兵庫県立陶芸美術館・赤木清士コレクション
この皿を観たのは、兵庫陶芸美術館「受贈記念 赤木清士コレクション 古伊万里に魅せられて―江戸から明治へ―」展でした。
赤木氏の有田(佐賀県)で作られた製品を中心とした234件488点におよぶコレクションです。江戸後期から明治期に作られた作品が多くを占めるものの、全体では江戸前期から昭和前期と製作時期の幅は非常に広く、産地も志田(佐賀)、美濃(岐阜)、九谷(石川)などが含まれます。
江戸期の古伊万里の名品に見られる代表的な意匠から明治・大正期の時代を投影した意匠まで、多様なデザインのコレクションがみられることが特徴です。

●意匠の面白さと技術革新
日本における磁器生産に大きな役割を果たしたのが、肥前有田です。
17世紀初頭、この地で日本初の磁器が作られました。肥前で作られた磁器は、積み出し港の名にちなんで、伊万里焼と呼ばれました。
白い素地に藍色の濃淡が美しい染付や鮮やかな色絵が施された磁器は人々を魅了し、17世紀半ばから18世紀半ばにかけては、オランダの東インド会社を通じて海外にも輸出されました。
相撲の意匠以外にもコレクションの中で面白く興味深かったのは、明治以降のお皿。
描かれるモチーフも、時々の流行に応じて変化し、文明開化による暮らしの変化をいち早く取り入れたものがでてきます。
電線や鉄橋、蒸気機関車、人力車など目新しいものが描かれたものがありました。
19世紀初頭には肥前を追随すべく瀬戸や京など各地で磁器が焼かれるようになり、町人文化が全盛を迎えるなかで、様々なうつわが人々の暮らしを彩りました。
明治期以降には釉下彩や銅版転写などの新たな技術が導入されます。
それまでにあった着物の染色などに使われた型紙の技術がいかされた資料や、銅版転写の材料なども一緒に展示されており理解が深まります。

もともと、赤木清士氏(1932-2019)は建設業を営む傍ら、神戸異人館街でランプと出会ったことをきっかけに、日本の灯火具や近代のものづくりと深くかかわる科学技術史資料の収集に情熱を注がれました。
1965(昭和40)年頃から収集を始めた陶磁器においても、鉄橋や電線が描かれた作品を特に愛好し、有田で作られた作品を中心に志田焼や美濃焼などを含む200点以上のコレクションを形成。ですので、古美術として評価の高い作品のみならず、資料的に価値のあるものや、また趣の違うものがみられました。
ちなみに、日本の灯火具は「神戸らんぷミュージアム」で公開。
科学技術史資料は3000点が東京都江戸東京博物館に。1400点がトヨタ自動車に収蔵されています。

 

●収集の楽しさ
これだけ膨大なコレクションをされた原動力はなんだったのでしょう。
氏は、「歴史上、無名の人々の心、そして生活を、私は学びたいと思い続けてきた。」と記されています。
美しいものへの憧れ、愛でる喜びはもちろんでしょうが、古美術愛好家、数寄者のコレクションとは少し違う印象も受けます。記録として後世に残すことで、ご自身が事業によって得た利益を社会に還元しようとする使命感を持たれておられたのかもしれません。
こんなエピソードがあります。
1994年(平成6年)に、氏が収集した陶磁器作品の桐箱作成に取り掛かられました。翌1995年(平成7年)1月17日、阪神・淡路大震災が神戸を襲い、氏が保管していた建物も被害を受けたそうで、ほとんどの陶磁器は桐箱に収められており無事だったといいます。
その志がいかされて、本当に良かったと思います。

 

幕末から明治にかけての器ならば、まだまだ民家の蔵に眠っていたりして、市場に出回ることも多いのです。手頃な価格で手に入るものもあります。
手元眺めてみたり、食事に使ったり。探すことも含め楽しくなること、請け合いです。

 

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