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有線vs無線 超絶技巧のバトル・並河靖之・濤川惣助/七宝・帝室技芸員

●世界に届く日本の超絶技巧 

「一、十、百、千、万、十万、百万・・・120万円!」 

何気なく見ていたテレビ番組で僕はふと思い出した。120万円の鑑定額のついたきれいな小壺に見覚えがある。あっ、爺ちゃんにもらった壺だ。 

そう、あれは20数年前、僕が小学生だったころ、母親の実家を訪ねた時だった。一泊して帰宅する間際、僕は爺ちゃんに呼び止められた。「こっちへ来なさい」。爺ちゃんは小さな書斎を持っていたが、そこに招き入れ、小さな木箱をもらった。中には牛乳瓶よりやや小さいくらいのきれいな模様が描かれた縦長の壺が入っていた。「うちの女たちはものがわからんでな。あんたが持って行き」と僕のリュクの中に詰め込んで「気をつけて帰るんやで」と母の元へと戻るように言った。そのまま京都駅まで戻り、東京行の新幹線に乗ったが、さすがに母に黙っているわけにはいかず車中で箱の蓋を開けて中の壺をのぞかせたが、「ああそう」と言ったきり関心を示さなかった。たしかに「ものがわからん」と爺ちゃんが言った気持ちは少し理解できた。爺ちゃんはその二年後に他界した。いまだに僕に渡した意味は分からないが、結果的に遺品となったその壺と、このテレビで見た壺はとても似ているのである。 

テレビの中の解説では、その作者は並河靖之という人らしい。明治時代の人でその作品は海外へ輸出され、人気を博したと紹介していた。確かに細かな模様は「超絶技巧」と呼べるものだ。たしか、洋服ダンスの奥にしまっておいたような・・・。扉を開け、スーツやらコートやらをかき分け、懐かしい木箱を見つけた。蓋をあけて、中身を取り出す。果たして、テレビで見た細密な蝶の模様がそこにもあった。ひっくり返して底を見ると、「並」の文字。まちがいない、並河靖之だ。 

●並河靖之とは 

番組を見終えて、さっそくインターネットで「並河靖之」を検索してみる。並河は明治時代の七宝の工芸家だという。家業を継いだ人ではなく、まったくの知識や資材が無い中、試行錯誤して技術・意匠の改良を進めてテレビで見たような超絶技巧の作品を生み出したらしい。素晴らしいチャレンジャー。手元の小壺を見ていると、ワクワクしてくる。 

先のテレビを見るまでは、僕は七宝そのものを理解していなかった。改めて「七宝」を検索してみると、「金属面に加飾しようとする文様の輪郭を金属細線でかたどったり,表面をくぼませたりして,ガラス質の色釉 (エナメル) を詰めて加熱,溶着させたもの」とある。テレビで見たとおり、この細かな輪郭は描いたものではなく、金属を曲げたり、丸めたりしたものだ。実に細かな作業であり、代々東京生まれである父の家系の血を引いて、典型的な江戸っ子の気短な僕には、とうていできない仕事である。翌日の夕食時に爺ちゃんからもらった七宝とテレビで見た並河の話を母親にしたが、「ふぅーん、そうなの~」と言って、一向に関心がない。心の中で僕は爺ちゃんに報告した。「あなたの娘はまちがいなくものがわかりませんでした」と。 

●無線七宝と濤川惣助 

いろいろと並河について調べていくと、別の「ナミカワ」の存在がわかった。名前は「濤川惣助」という。千葉県に生まれた濤川は、東京で七宝の製造を始めたという。こちらも家業を継いだという訳ではなく、七宝職人がいた工場を買い取って事業を始めたようである。帝室技芸員という明治時代の美術家・工芸家の表彰制度において、七宝工芸家で選ばれたのはこの「ナミカワ」二名だけであった。 

また濤川は無線七宝という技法を開発している。焼成前に輪郭を作っていた金属細線を抜き取ってしまうという技法である。結果として、輪郭のない柔らかな図案が出来上がる。そうだ、例のお宝鑑定のテレビの解説で見た横山大観という画家の技法に似ている。ただ、手間暇のかかる「ナミカワ」らの技法は大正時代以降には輸出の衰退により購買層がなくなるにつれ衰退してしまったようだ。 

それから数日後、母親が小箱を持って僕の部屋に来た。「そういえば、義母にいただいたものだけど、これも七宝らしいよ。すっかり忘れてたけど・・・」。聞けば、元々東京の葛飾にいた父親の母が持っていたものとのことだが、手にしてビックリした。無線七宝の富士山が描かれた小箱。ひっくり返して底を見ると「濤川」の文字。奇跡だ。世界の「ナミカワ」が、ここ東京下町の足立区で出会うなんて! 

僕が興奮してこれすごいものだ、と母に言うと、「ぼんやりした絵がイマイチ好きになれないよのね~」と母は答えた。「ああ、やっぱりな・・・」と思いつつ、今度は心の中で僕はお祖母さんに報告した。「あなたの義娘はものがわかりませんでした」と。 

 

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