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もうひとつのスカーレット

 2019年九月から放映されたNHK連続テレビ小説「スカーレット」は女性陶芸家の半生を描くストーリーだった。モデルとされた実在の陶芸は神山清子。信楽焼の陶芸家であり、テレビの中では一部彼女の作品実物が使われている。昭和の前半で、窯業は男社会。窯には女性が近寄れない時代でもあったが、「女性陶芸家の草分け」とも呼ばれるようになるまで、自分の作品を突き詰めていった方である。テレビのストーリーと同じで、彼女は長男を白血病で亡くしている。テレビの中で描かれておらず、あまり知られていないことだが、長男の死後、日本の骨髄バンク設立に尽力した方である。 

陶芸界、というとややゾーンが狭くなるので、あえて窯業という言葉を使うが、社会の大きな波が窯業に大きな影響を与えたことがある。それは明治維新であり、廃藩置県という社会制度の変革に伴って現れた。窯業製品、つまり焼き物は江戸時代後期には庶民の間でも使用されるようになっていたが、窯業において大きな支えとなっていたのが、各地の藩・大名であることは事実である。それが、廃藩置県によって大名の庇護を失い、存立基盤を民需に自ら変えていくことを求められたのである。 

福岡県の山間部、大分県に近い旧小石原村。ここに藩の庇護を受け、茶陶を含む藩の御用品を製作していた高取家がある。廃藩置県当時で九代目となっていた窯元である。当時の当主は「藩窯」であるという自負により、大名を解かれた領主である黒田家に殉じて、廃窯を決めた。藩のご恩に報いるため、朝鮮陶工を祖先とし、江戸初期より続く高取焼はこれを機に廃窯したのであった。しかし、九代の長男は九代に隠れて、新たに窯を造り、密かに高取焼を作り続けたという。しかし、九代の知られることとなり、十代は家を出された。九代の死後、実家に戻った長男は十代となったが当初は材木商をしていた。のちに長女・次女の手助けを得て高取焼再興に本格的に取り組む。東京・高島屋での個展まで準備されていたが、直前に他界。個展は遺族により開催されたが、遺作展となった。昭和13年九月の事である。高取焼再興は水泡に帰し、ふたたび窯の火は消えた。第二次世界大戦も始まり、高取焼の復興はさらに延びることとなる。 

十代の長女の名前は「静」という。十代が高取焼再興を始めた頃、彼女はすでに結婚して、東京で主婦として過ごしていた。昭和32年、この「静」が小石原の実家に戻ってきた。父である十代の遺志を継いで、高取焼再興を目指した。子供はすでに成人していたが、夫は東京に残しての一時帰郷である。ひと窯を焚き終えると、東京に戻り当時就職していた保険会社で働いたという。その後、夫と離婚し、高取焼再興に半生を賭けることとなるが、すでに50才となっていた。趣味ならともかく、窯元生まれとはいえ職業として自立するには容易でないことと思われ、周囲の人々は反対した。実際に作品は作陶を始めたばかりではすぐに売れるはずもなく、東京での保険会社の仕事はしばらく続けざるをえなかったという。また、窯再興のために知人より多額の借金をしており、失敗した場合は自殺し、加入していた生命保険の払戻金で弁済をしようと考えていたともいう。果たして初窯の作品は売れずに残り、窯を手伝っていた職人とともに博多まで知人の会社を訪ね、焼き物の行商をしたという。 

高取窯のさらに山奥には、小石原焼の窯元がある。柳宗悦やバーナードリーチも訪ねた民芸の郷である。知名度としてはすでに小石原焼の方が高く、その当時での観光ルートの一つとしてその山奥まで訪ね来るバスも多かった。知人が小石原焼訪問を控えたある観光団体の予定ルートを知り、「なんとしてもその団体を途中でつかまえなさい」と電話をかけてきたという。実際に彼女は、バスの前に両手を広げて立ちふさがりバスを止め、なんとか自分の窯へといざない、作品を買ってもらうことができた。 

その後、彼女は遠州流家元との知遇を得て、東京・日本橋三越での個展へとつながり、高取焼の知名度を高めるきっかけを作った。この個展より「十一代高取静山」と名乗り、以降、高取焼再興の祖として、活躍していくことになる。 

こうした経緯は自著「炎は海を越えて」という本に詳しい。恐らく編集者がある程度は手伝って書かれているかもしれないと思うのだが、なかなかの文才を感じる。なぜなら彼女は働きながら、夜学の日本大学で国文学を学んでいたのである。陶工にして、才女でもあった。 

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