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陶片は語る

「永仁の壺事件」。 

美術品の贋作が世間を賑わすことがあるが、この事件はかつて国の重要文化財として指定された鎌倉時代の陶芸作品が、現代作の贋作として判明した事件である。事件とはいえ、その主役を演じた作者は犯罪に問われたり、告訴を受けたとう訳ではない。 

この贋作を作り上げた事件の主役こそ、現代陶芸において作品が非常に高額で取引されている陶芸家・加藤唐九郎その人である。 

その贋作は鎌倉時代の年号・永仁銘が彫りこまれている壺のために「永仁の壺事件」と呼ばれている。「永仁」という年号は鎌倉時代であるが、その製作年代を補足した資料が、鎌倉時代の窯跡・松留窯から出土したとされる陶器の破片・陶片である。つまり実物の壺と鎌倉時代の陶片が酷似していたたために永仁の壺は鎌倉時代の壺として、重要文化財の指定まで至ることができたのである。しかし、その後、マスコミにより贋作疑惑が報じられると、当時最新の分析記述により、現代作と判明する。さらにその後、松留窯自体やその窯跡から出土されたとする陶片は唐九郎による偽装工作だったことも判明した。こうした鎌倉時代の壺と見まごう作品や手の込んだ偽装工作まで行った理由は、お金のためであるか、他の理由であるかについては、その後、唐九郎は明らかにしていない。しかし、この事件の顛末として、のちのちまで残る禍根が二つある。一つは、永仁の壺を重要文化財として推薦した文化庁の技官・小山富士夫が責任をとり職を辞任したこと。もう一つは、永仁の壺の真の作者は自分だとマスコミに発表した唐九郎の長男・嶺男が、この後に加藤姓を捨て、夫人の姓である岡部と改姓したことである。事件の経緯は、「時代屋の女房」で直木賞を受賞した松井覚進が小説「永仁の壷」に著している。 

現在、科学的分析が進んで、製作年代の特定ができるようになったとはいえ、窯跡から出土される陶片が価値を失ったという訳ではない。製作年代を調べることはあくまで作られた時期の特定であり、陶片が語る情報は様々にある。技法や材料、焼成方法など、貴重な資料である。 

ここに二つの唐津焼の陶片がある。高台の大きさや推察される器体の形状、絵付けの有様などから判断して、同じ窯跡からの出土品であろう。この二つ違いは見ての通り異なる色合いである。一つはグレーに、もう一つは明るい茶色に焼きあがっている。この原因は薪窯のなかの酸素量による。酸素がないと火は燃えないのでまったく酸素がないわけではないが、炎が燃えている間に陶土や釉薬に含まれる酸素を奪い取りながら焼きあがることが起こる。これを「還元焼成」とよび、逆に酸素をあまり奪い取ることなく焼きあがることを「酸化焼成」という。鉄分をある程度含む陶土は還元焼成でグレー、酸化焼成で明るい茶色に焼きあがる。今でこそ還元焼成、酸化焼成のコントロールは十分できるが、この陶片ができたころは還元・酸化をうまくコントロールできず、結果として焼成されたものが還元し、また酸化して焼成色が決まったのではないかと思う。 

ただし、陶芸はこの還元・酸化のコントロールをしっかり行うことが大切である。青磁の青は還元でないと出ない。逆に、織部の緑は酸化でないと出ない。現代の陶芸窯、特にガスを燃料とした窯はコンピュータでコントロールすることで、的確な失敗のない焼成ができる。しかし、陶芸における「味」といった部分はコントロールできないところに多く発生する。だから、いまだ薪により焼成された作品が好まれる。焼き物好きのこだわりは難しい。 

ところで先の陶片だが、骨董市や美術フェアなどで、そこそこの値段で販売されている。陶芸の研究材料として購入されるケースはあるだろうが、一般の方も買っていく。どうするのか? 実は、小さいものは箸置きにする。やや大きいものは酒肴や珍味、箸休めなどを盛る。やはり日本人は焼き物好きである。 

買取実績

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宮城県仙台市/ 70代 男性 買取実績詳細はこちら

彫刻・ブロンズ/銅製 仏像( 松久宗琳)

買取価格:100,000円

三重県桑名市/ 男性/50代  買取実績詳細はこちら

絵画/洋画 写実絵画 静物画( 山下徹)

買取価格:35,000円

佐賀県佐賀市/ 50代 男性 買取実績詳細はこちら

茶道具/鉄瓶( 龍文堂)

買取価格:10,000円

愛知県名古屋市/ 男性/70代  買取実績詳細はこちら

日本画・掛軸/掛軸( 田能村竹田 )

買取価格:6万円

神奈川県横浜市/ 60代男性 買取実績詳細はこちら

絵画/油彩画 人物画( 長谷川昇)

買取価格:25000円

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絵画/油彩画( 水森亜土)

買取価格:3万円

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絵画/リトグラフ 薔薇図( 梅原龍三郎)

買取価格:15,000円

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陶器・磁器/有田焼 濁手花瓶( 十四代酒井田柿右衛門)

宮城県仙台市/ 70代男性 買取実績詳細はこちら

刀剣・武具/拵( 作家不明)

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