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心理を移す色と絵画/ゴッホ・ピカソ・東山魁夷・奥田元宋・シャガール

●黄色好き
編集子は子供の頃、黄色が好きな色であった。しかし、「黄色好きは精神異常」という友人がおり、子供心に「黄色好き」とはいえなくなってしまった。
その後、ゴッホの「ひまわり」という絵を目にし、そのゴッホが精神病院に入退院を繰り返した果てに、自殺してしまったことを知ると、やはり黄色が好きな人の精神状態は正常ではないのか、とも思った。
「黄色と精神異常」の関係については、明かな理論が無いようだが、事実としてゴッホの絵には黄色が多いような気がする。ゴッホ自身が持つ病気の可能性として「黄視症」という病気であった可能性があるらしい。これは見るものが黄色みがかって見えてしまう病気とのこと。
そういえば、実際に彼が住んでいた家も自身の絵に描かれていたとおり「黄色い家」である。したがって、単純に考えてもゴッホは黄色が好きだったようである。
一方、ゴッホは黄色と併せて青も多用していた。有名な糸杉の絵の夜景は青が塗られている。色彩の組合せとしては、黄と青はいわゆる補色関係にありコントラストが高く、はっきりとした描写になることは知られている。

  

●色の人体への影響
色の人体への影響は、ある程度生理学的に検証されている。赤い色を見ると、人は交感神経が刺激される。これにより血圧が上がったり、脈拍が早くなる。したがって、寝室にはあまりふさわしくない色である。一方、青や緑は交感神経の働きを抑え、リラックスさせる効果を持つという。したがって、眠気を誘う色として寝具に使用することは理にかなっている。
併せて、目立つ色として赤や黄色は人工物に多く用いられている。交通標識では制止を意味する「赤」、そして注意を促す「黄」が多く用いられている。
さらに注目させる効果としても「赤」は役立っている。店舗のテントや看板などは赤は目立つ。おそらく、ハンバーガーチェーンのマクドナルドが企業の店舗を彩るとして「赤」を選んだことは、やはり目立たせるという意味があったと思う。

  

●文化としての色
だが人間が色に対する捉え方は、必ずしも先天的なものではない。やはり、成長していく間での学習ということが大いに影響する。たとえば、「怖い」という言葉から連想する色は暗闇の「黒」であったり、流血の「赤」だったりする。これはやはり経験によるイメージが強いと思われる。心理テスト・性格検査法の中に「CST/カラーシンボリズムテスト」という手法がある。これは単語から連想される色を回答させるものである。心理検査の方法としてはこれはメジャーなものではないが、編集子は卒業論文でこのテストの研究をした。実は、このテストでの回答を見ると、例えば先の「恐怖」という言葉でイメージする色を回答させると「緑」「紫」といった色を回答する者がいる。また、「愛情」という言葉では一般的に「ピンク」「赤」が選ばれやすいのだが、「黒」「黄」といった、突飛な色を選ぶ者がいるのである。こうした、一般的な人が持つ言葉のイメージの色と異なった色を選ぶ原因までは研究されてはいないのだが、このテストでは平均的に選ばれる色と各個人が選ぶ色との乖離度によって性格を図る手法となっているのである。いずれにしても色に対するイメージは学習で個人ごと固定されていくのである。

●絵画の中の色
以前、日本画専門の美術館として知られる東京の山種美術館で「東山の青、元宋の赤」という展覧会が開催された。東山とは東山魁夷のことであり描かれる青を多用した絵画は「東山ブルー」と呼ばれる。後者は奥田元宋であり彼の得意とした紅葉の風景画を指した言葉である。色で画家の技法のすべてを語れるわけではないが、ゴッホと併せて、この二名の画家は作品の色が印象的である。
洋画家では実際の色にこだわらず独自の配色をしたピカソやシャガールなどキュビズムたちの色使いは独特である。しかし、ピカソの絵画には青や緑を多用した「青の時代」と呼ばれる絵画がある。これはピカソが19歳の時に起こった友人の自殺によって生じた悲哀や苦悩などの精神状態が青系統の絵画となって表現されていると見られている。東山の青にはそうした苦悩の精神状態はないが、自ら「青は感覚と精神を繋ぐ色」と述べているように、彼の求める精神性を写した色なのであり、その内なる世界が表現されたものなのである。

 

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