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プロパガンダの絵画/藤田嗣治・小磯良平・川端龍子/高村光太郎/チャップリン・ディズニー

●戦争とプロパガンダ

「映画はプロパガンダです」とチャップリンは言い切る。第二次世界大戦の中、映画は戦意高揚のための道具として使われた。その際たる国はドイツ。あのヒトラーが国民を引き付ける演出のもと、プロパガンダとして映画を製作している。対するチャップリンは「独裁者」で反ヒトラーのプロパガンダに取組んだ。実は奇しくもこの二人の誕生日はわずか4日違いだった。

映画でいえば、アメリカではディズニーも戦争のプロパガンダとしての映画をアニメーションで制作している。日本でも「桃太郎」を戦時中の日本軍に登場させて、外国人に打ち勝つストーリーがアニメーションで制作した作品があった。

●日本のプロパガンダと戦争画

1970年、第二次世界大戦後にアメリカ軍が接収して、管理していた絵画が日本政府へと戻された。東京・竹橋の国立近代美術館に戻されたそれら絵画は「返却」ではなく「無期限貸与」という条件の元、戻されたものであった。それの絵画は藤田嗣治をはじめとする日本人画家が第二次世界大戦を描いた作品、戦争画150点である。

これらの絵画はもちろん日本および日本軍への戦意高揚・プロパガンダのために描かれた作品である。戦時中にはこうした戦争画を展示する作品展が百貨店で度々開催されていたという。国立近代美術館に貸与されている作品以外にも、戦争画は存在している。昭和のキャバレー王と呼ばれる実業家・福富太郎も戦争画のコレクターだった。

戦争画を描いた画家は、藤田嗣治、小磯良平、吉岡賢二、川端龍子、宮本三郎、向井順吉、田村孝之介、山口蓬春、小早川秋声、福田豊四郎など、そうそうたる顔ぶれで、洋画家と日本画家が存在している。いずれも共通していることは、日本軍に従軍して戦地の様子を描いたり、軍の様子を描いたことにある。

もちろん、亡くなった画家ばかりで、今も名を残している画家なので、その作品はプロパガンダという意図を汲まなくても、見る者の心をとらえる作品は多い。

特に、藤田嗣治の描いた作品は画家としての力量をすべて注ぎ込んだともいえる出来栄えであると評価する人は多い。藤田も自らこう述べている。「いい戦争画を後世に残してみたまへ。何億、何十億という人がこれを見るんだ・・・。」

これら戦争画の精緻・細密な描き方は、藤田自身が戦争画に集中していた姿を想像できる。藤田はある作品の制作に入る前には、斎戒沐浴してから描き始めたという。

    

●戦争画でないプロパガンダ

横山大観。第二次世界大戦前から日本画の第一人者として知られている。大観は戦争画を描いていない。しかし、大観がプロパガンダとして描いたのは「海に因む十題、山に因む十題」という20枚の日本画である。東京の三越・高島屋で展覧会の開催前にはすべて売約済みとなり、この代金50万円は日本軍の戦闘機四機の制作費として使われたという。

伊東深水。美人画の大家である。実は伊東深水も従軍してシンガポール、ボルネオなどの南方へと向かっている。しかし描いたのは日本軍ではなく、現地住民の生活をスケッチで400枚ほど描き、帰国後には作品展が開催されたという。

そして、高村光太郎。近代彫刻家の最高峰である高村光雲の長男である。彫刻家として知られているが、詩人として知られている。光太郎は詩をもって、プロパガンダに協力した。200編ほどの詩が戦意高揚のために作られたとみられている。

●そして、戦後へ

東京裁判。極東軍事裁判が正式名称である。日本人の戦争犯罪者として収監されたA級戦犯の裁判である。戦犯者にはB.C級もいたが、彼らの裁判は横浜で行われたことから横浜裁判と呼ばれている。では、戦争画を描いた画家たちは戦犯となったか。答えはNoである。誰一人収監された画家はいなかった。しかし、いつか収監されると思った画家はいたはずである。

藤田嗣治は戦後、アメリカ軍からアメリカで開催が計画された「日本の占領」をテーマとした展覧会に出品する戦争画作品の収集を依頼された。そうして集められた戦争画が現在、近代美術館に貸与されている作品たちである。しかし、集められた作品はそのまま留め置かれ、展覧会でてんじされることはなかった。その後、藤田は日本へのさまざまな失意の元、フランスへと渡っていった。

自らプロパガンダへの戒めを強く思った人物がいる。高村光太郎である。自分が作った詩によって、死んだ人がいることに責任を感じた。そして、光太郎は七年ほど岩手県盛岡の山林に閑居を建てて、一人自戒の日々を過ごしたという。

芸術家たちはその後、戦争を語ることなく、亡くなっていった。

   

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