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ある画商の悔恨・田中一村/川端龍子・奄美大島

●東京・京橋の画廊にて
こんにちは、いらっしゃいませ。今日は、画廊巡りですか。小さな店であまり点数は持ち合わせていないのですが、よろしかったらゆっくりご覧ください。今の銀座や京橋は昔より、ギャラリーや画廊の数自体がだいぶ減ってしまって、寂しい限りです。
そうですか、お客様は田中一村の絵画をお探しなのですね。素敵ですよね、一村。美術館の作品展でご覧になったのですね。そうですね、恐らく奄美大島時代の作品はほぼ流通していないでしょうね。千葉に在住の頃や日本各地を旅していたころの絵がわずかに出てくるかもしれませんが・・・。川端龍子が主宰していた青龍社時代、日展などに出展していた頃の絵が出てくるかどうか・・・。頼まれて、個人宅の屏風や襖絵などは書かれていたようなので、そうしたものも出る可能性はありますが、かなり難しいとは思います。戦前の南画もあるようですが、一村の名前が世に知られてから、他人の絵に一村といれた贋作が多くて、画商仲間では取扱いに困るようです。
この画廊を始めた父が残していた図録がありますが、ご覧になりますか。どうぞ、こちらにお掛けしてお待ちください。

●日本のゴーギャン
どうでしょう、ご覧になった作品も掲載されているでしょう。縦長の構図が多いですね。一村らしさは奥行を表現しにくい縦長の紙の上で、遠近を感じることのできる構図に仕上げていることにあると思います。
また、一村は写真にも強い関心があったようで、撮影された写真が数多く残されているようです。写真では撮影する時は画角と対象物の引き・寄りという距離感を考慮しますので、写真撮影時の風景の切り取り方を絵の中にうまく取り込んでいったのかもしれません。色彩はやはり奄美の自然を感じる、すばらしいものですが、墨色の使い方も色彩とマッチしているように感じます。
一村は「日本のゴーギャン」と近年は呼ばれていますが、ゴーギャンは生地のフランスから離れても晩年まで作品を売ることができたから幸いです。しかし、一村は病気と糊口をしのぎ、一人閑居で亡くなっています。一村は「五年働き 、三年描く。二年働き、個展を開く」との計画を立てていたようですが、個展を開く前に体調を崩し、急逝したようです。

●画商の悔恨
青龍社は東京の画壇で注目されていたのですが、所属していた一村という画家はだれも関心を持っていなかったそうです。もちろん、あまり注目されないのは実力と理解される美術業界ですし、それは仕方ないことのようです。公募展を含めて、中央画壇に失望した一村は日本各地を旅していたようです。戦後、奄美大島はアメリカ領でした。本土復帰したのは1953年です。一村はその五年後に、奄美へと向かったようですね。
1970年ごろ、父の友人が観光開発のために度々、奄美へと渡っていたようです。当時、この画廊を立ち上げたばかりの父に、その友人がこう言ったそうです。「奄美に一村という面白い画家がいる。ぜひ一度、訪ねてみたらよい」と。その後、その友人は奄美在住となり連絡も途絶え、父は画廊の経営で多忙となり、その言葉は実現されていませんでした。しかし、一村の死後、遺作展のパンフレットを携えて、その友人が訪ねてきました。「ひさしぶりだな、お前はこの画家にあったか」と言われ、十年前の言葉を思い出しました。掲載された絵の写真をわずかに見ただけで父は驚きました。父は一村を見出すチャンスを逃したということです。もちろん、一村の死後でも本土の画壇・画商からの関心は一切ありませんでした。生前の一村の絵を見ていたのは、画商ではなく奄美の住民だけでした。 NHKの地方局が一村の死から三年後に初めて絵を紹介した時には「単なるイラスト」「なぜ素人を取り上げるのか」という批判があったようです。
しかし、死から七年後、NHKの番組「日曜美術館」で一村が紹介されると、美術界は騒然となりました。父はこの図録を手にしながら「一村を殺したのは俺たち画商だ」とつぶやきました。私がこの画廊を引き継いだ時に、父から言われたことがあります。「画商は画家の名前を追うことなく、自分の足で絵を探し、自分の眼で見極めろ」と。余談が長くなりました。一村作品を見つけるのは難しいかもしれませんが、よい絵との出会いができますように。

 

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