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秋の夜長に アジアのお月見/後の月/月と日本の美意識

つい先日まで夏日があったのに急に涼しくなりました。 

先日10月20日は美しい満月でした。 

今年はお月見されましたか? 

10月の満月をアメリカインディアンは、「ハンタームーン」と呼ぶそうです。 

エサを豊富に食べて成長した野生動物たちを、ハンターが狩るのに絶好のタイミングだったため、その呼び名になったといわれています。 

●アジアのお月見 

日本で満月といえば、中秋の名月を意味することが多く十五夜ともいいます。 

今年は9月21日でした。太陰太陽暦の8月15日の夜に見える月のことです。 

中華圏では十五夜の翌日より、長期休みの「中秋節(ちゅうしゅうせつ)」に入ります。 

中国や台湾では、どこも欠けていない満月を「円満・完璧」の象徴ととらえ、中秋節の満月の日に、家族が日本の正月のように集まり、食事をしながら満月に見立てた丸い月餅というお菓子や、文旦という果物を食べる習慣があるそうです。 

街の至るところにカラフルな灯篭やランタンが飾られ、年中行事である、「春節(旧正月)」、元宵節、端午節と合わせて「中国の四大伝統祭り」の中のひとつとして盛大にお祝いするとか。 

香港では、中秋節の前日に通常より2.3時間早く仕事を切り上げ、家族団らんで食事をしたあと、山頂などの高いところや公園に行き、燈籠を手にして、月を愛でるそうです。 

べトナムでも月餅を食べるようですが、他の国とは違いお月見は子供のためのお祭りとされています。お月見の前後には子供達やプロが通りで獅子舞を踊るんだそうです。 

色んな家へ踊って入ってもいいかと訪ね歩き、許可が出た場合は家の中に入って獅子舞を踊り、その家の幸運を祈る。その家の家主は感謝を込めてちゃんとご祝儀も渡します。 

子供は純粋で無邪気なことから聖なる自然の世界と近いとされ、そのため子供達の近くにいることで精霊や神とつながれるという由来があるようです。 

日本のお正月にみられる獅子舞のルーツでしょうか。日本の都市部ではなかなかおめにかからなくなってしまいましたが。 

●後の月 

では、日本では十三夜「後の月(のちのつき)」も愛でることはごぞんじでしょうか。 

「後の月」は、旧暦9月13日の月を眺める日本独自の風習です。 

諸説ありますが、旧暦8月15日の「中秋の名月」を眺める風習(十五夜)は中国から伝わったものといわれ、日本では台風の時期に重なることが多いため、秋晴れとなることが多い旧暦9月に2回目のお月見を設定したものとされています。 

今年2021年は10月18日がその日にあたりました。 

十五夜は里芋を供えることから「芋名月」と呼ばれるのに対し、十三夜ではこの時季に収穫される栗や枝豆を供えることから、「栗名月」や「豆名月」とも呼ばれます。 

十三夜の月はちょっと欠けています。完璧な円ではなくちょっと足りないところに心を寄せるのが、もののあわれを好む日本人らしく、そんな風習を持つ日本にいることが私は嬉しく思います。 

 

●月と日本の美意識 

昔から月は文学や美術と関係が深いですね。 

月をあらわす言葉・単語・異称の一覧をしらべてみたら170語以上あり、あらためて驚きました。それだけ日常に溶け込んでいたのだということがよくわかります。 

人工の明かりもない夜は暗く長く、それだけ月の光に焦がれる思いがあったのでしょう。 

若いころに、満月の後の十六夜を境として「立ち待ち月」「居待ち月」「臥し待ち月」という呼び方をすると知ったときは、なんて素敵!と痺れたものです。 

今回、調べた中にはじめて知る言葉があり、「銀鉤(ぎんこう)」三日月の別名がありました。その姿が銀の鉤(かぎ)に見えることからだそう。 

鉤といってもピンときませんが、釣り針といったらわかります。ピーターパンのフック船長のなくした手の代わりについているものですね。 

また、巧みな筆跡のことも「銀鉤」といい、その姿が銀の鉤(かぎ)に見えることから使うとのこと。なにか命銘で使ってみたい言葉です。 

中秋の名月と十三夜の両方を愛でないと、「片見月」といって縁起が悪いと言われ、この言い伝えは、江戸時代の遊郭で広まったそう。 

遊女がお客に「一緒に2回お月見をしないと縁起が悪いのよ。だから十三夜には必ず来てね」と誘うのに使われたとか。 

やりますねえ、こんな風流に誘われたり誘ってみたい?! 

四季の移ろいを愛した日本人は、月の満ち欠けの移ろいにも敏感で月を題材にした絵画や工芸品も数多くあります。 

宗教美術をはじめ、水墨画や絵巻、屏風絵などに、また手箱や硯箱などの蒔絵の意匠、陶磁器への絵付など多彩で私たちを魅了し続けています。  

「秋の夜長」の夜長とは、秋分を過ぎると夜が長く感じられることから、秋の季語となっていて、およそ9月23日頃から、立冬の11月7日頃までの間を指します。 

実際に夜が長いのは冬ですが、冬の季語は「短日」というようです。 

なにかと忙しい日常ですが、夜長を楽しむのに、晩酌でもしながら音楽や映画、読書に親しむのもよし。 

お月見の季節は終わっても、これから空が澄んで冷たくなった空気に触れながら、冴え冴えとした月を眺めるのも良いのではないでしょうか。 

  

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